このページは、『 熊本日々新聞 』 に連載した一部で、それに写真を追加したものです。

ウェルウェッチア

NB6s
これは中くらいのヤツ。つぼみが出ている

 南西アフリカの海岸沿いに、アンゴラから南アフリカまで続く砂漠地帯がある。 そのうちナミビアの砂漠をナミブ砂漠と呼んでいて、そのほぼ中間にナミビアの海岸線では一番大きな街、スワコプモンドがある。
 大きいとはいえ人口は数万、それでもこの街はこの国唯一の貿易港で、鉱物資源の積み出し港として栄え、今でも内陸と繋がる唯一の鉄道と舗装道路がこの街から出ている。緑の内陸部から徐々に緑が少なくなってゆき、遂に石と砂だけの世界になった大地を200キロ弱走ってこの街に着いた。西アフリカのガーナ以来久しぶりに見る大西洋に沈む夕日。そしてこの日、沈む夕日と共に1993年も暮れた。
 ここに来た目的は、世界中でこのあたりだけにしか生息していないというウエルウェッチアという植物を見る為だった。
 ウエルウェッチアは年間数ミリしか雨が降らないという乾燥地帯の砂漠に生息している。どうやって生きているのか、というと、南極から流れて来る冷たい海流が、熱せられた大地の影響でしばし霧になり、漂って来るその霧から水分を取って生きているのだ。

NB5s
世界最大のヤツ。1500歳以上!

 元旦の朝出発する。街を出て砂漠に入ると道はすぐにダートになった。見渡す限り石と砂の世界。そしてその中を一時間も走ったらあっけなくそれが、居た。
 遠くに小さな、黒いゴミのように見える物が転々と散らばっていた。近づいてよく見たらそれがウエルウェッチアだったのだ。枯れかかったサボテンのように先が干からびた幅の広い葉が地面から湧き出るように生えている。小さい物は10センチ位から、1.5メートル位までのが数メートルおきに、200メートル位の範囲にだけ居た。
 そして、そこから更に30キロ走った所に世界最大のそれが居た。直径4〜5メートル、高さ2メートル程で、何と樹齢15〇〇年以上と書いてあった。手のひら程の大きさに育つまで数十年、1メートルだと数百年もかかるという気の長い植物らしい。
 葉は中心部から湧き出て、先端は枯れていく。ちょうどこの時、中心部につぼみが出ていた。気温は50度を越し、雨も降らないここでよく生きているものだ。

  NB11s
若いヤツのアップ

 ウエルウェッチアはなぜか日本名が付いていて、その名も奇想天外という。正に名の通りだ。ここに2時間余り居た。何か人に会いに来た気分になったのは何故だろう。不思議な気持ちでここを後にした。

戻る